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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第37回:20年前のジャズに思う1

   さて、ぼくはまたまた年末へ向けてライブ、ツアー三昧の日々を送っているけど、最近若いアーティストに出会うこと、発掘などに携わる機会が多くなってきた。こっちがそういう年齢になったって事なんだろうけれど、将来のあるアーティストと出会うことはぼくにとっても嬉しいことで、刺激にもなる。
  なんと言っても、時代の趨勢を感じたり若い人たちの空気に触れることができるし、未来を見て音楽をやっている以上こっちだって得るものは多いんだ。それに、最近の若い人たちは本当に巧い。つまり、楽器を操る技術が高い。この理由は、物心ついた頃から周囲に良い音楽があふれかえっているという日本の環境、ぼくらの時代と比べて教材や情報入手が格段にしやすいことなどがあると思うけれど、オリンピックと同じで体型も変わっていくように全体のレベルがじわじわ上がってきたっていうのもあるんだろう。これはホントに素晴らしいことだ。

若手アーティストとライブ後に楽屋でのショット

  ぼくらの若い頃は、ある意味ジャズの最後の全盛期だった。ジャズ全盛期をいつと考えるかは人によって異論があると思うけれど、流行ったり廃れたりしていくつかのピークがある。ホントの意味の全盛期はおそらく1930年代頃で、この時代はジャズがポップスの代名詞だった。当時のアメリカのポップスといえば、最盛期を迎えていたビッグバンド・ジャズか、昔ながらのカントリー&ウェスタンだったんだよね。だから才能溢れるミュージシャンは、クラシックでなければジャズをやるっていう時代だったんだ。

  これが50年代くらいからちょっと変わってきて、いわゆるR&B、ロックが登場する。60年代にはフォーク、シャンソン、カンツォーネ、タンゴのような民族音楽がブームになり、これらが融合してアメリカはポップス黄金期を迎える。70年代に入るとこれらの音楽が全部成熟期を迎えて、アメリカ音楽が世界中を席巻するようになった。

 

  ジャズはビッグバンドからビバップを経てクールジャズへ。この変化は、踊りながら聴く音楽から、座って鑑賞する音楽への変化だ。観賞用音楽になってから芸術性が追求され、ビバップがハードバップ、フリージャズ、コンテンポラリーへと発展。一方聴きやすいクールジャズの路線は、フュージョンやスムースジャズへと発展した。

  60年代に公民権運動など時代の流れに乗り、ジャズは開明的な音楽の代表として欧米諸国や日本などの先進国で注目を集めた。フリージャズが一般の人々にマニアックな音楽と見なされた頃には、変わってフュージョンが注目され、この間ずーっと全盛期だったと言ってもいいくらいだ。
  そしてぼくの若い頃が最後の全盛期と書いたのは、当時「新主流派」と呼ばれるジャズメンが続々現れ、ハードバップのリバイバルに沸いていたからだ。

1991年リリースアルバム

「TheBaltimore Syndicate」

  これは、元来黒人の民族性を濃厚に反映した固有の芸術だったジャズが、クールジャズ〜フュージョンの流れでロックや民族音楽と融合して固有性を失い、何よりも「漂白されてしまった」というインテリ黒人アーティストやジャーナリストのアンチテーゼだった。

  彼らはそこで、ジャズの芸術性がピークに達したフリージャズ直前のアンサンブル・ジャズ路線を志向した。これはもちろん無条件にカッコイイ音楽で、ジャズメンやジャズ好きなら誰もがその芸術性と精神性の高さに痺れるスタイルで、これに刺激を受けた若手ジャズメンが続々生まれた時代でもあった。

 

  ぼくが日本でリリースしたデビューアルバム「The Baltimore Syndicate」という作品は、そんな流れの中に位置する作品で、将来を宿望されたビリー・ドラモンド、スティーヴ・ウィルソン、ゲイリー・トーマスといった新主流派の新人アーティストと一緒に録音している。だけど今思うと、あれがジャズの最後の輝かしい全盛期だったような気がする。その理由はなんだろう?
  続きはまた次回。現在、RHYTHMATRIXのツアーが始まってます。11月は二川、名古屋、大阪へ行く予定。後はベース金澤英明とのデュオで上田に行くし、東京ではTOKYO FREEDOM SOULと様々なゲストを迎えたライブを、目黒ブルースアレイジャパンにて行う予定。みなさん、是非見に来てね!!


<クリヤ・マコト・ライブスケジュール>
11月03日(木) 二川よし味(0532-65-5765)
       RHYTHMATRIX
       出演:クリヤ・マコト(pf)、安井源之新(perc)、コモブチ      キイチロ ウ(b)
11月4日(金) 名古屋スターアイズ(052-763-2636)
      名古屋スペシャルセッション!
      出演:クリヤ・マコト(pf)、安井源之新(perc)、

      松浦直樹 (b)、
      倉田大輔(ds)、西崎佳代子(tp)、プリスカ・モロツィ(vo)
11月05日(土) 名古屋スターアイズ(052-763-2636)
      RHYTHMATRIX+上田裕香
      出演:クリヤ・マコト(pf)、安井源之新(perc)、コモブチキ     イチロ ウ(b)
      ゲスト=上田裕香(vo)
11月06日(日) 大阪ミスターケリーズ(06-6342-5821)
      RHYTHMATRIX+上田裕香
      出演:クリヤ・マコト(pf)、安井源之新(perc)、コモブチキ     イチロウ(b)
      ゲスト=上田裕香(vo)
11/7(月) 二川よし味(0532-65-5765)
      クリヤ・マコト(pf)×上田裕香(vo) デュオ
11/13(日) 上田LOFT(0268-27-0286)
      クリヤ・マコト(pf)×金澤英明(b) デュオ
11/16(水) 目黒ブルースアレイジャパン(03-5496-4381)
      TOKYO FREEDOM SOUL with Special Gests!
     出演:クリヤ・マコト(pf)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)、
      ゲスト=スティーヴ・エトウ(perc)、MARU from Fire      Lily(vo)、虎徹(vo)


※詳しくはクリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください
クリヤ・マコト・オフィシャルサイト
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

 

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