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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第26回:英国田舎町のジャズ・ラバーズ

  パリのセッションの次は、英国へ飛んでウェールズの田舎町でライブをやった。これがまた、すごく思い出に残る良い経験だった。ウェールズというのがどんな場所なのか全く知らず、何の前知識もなかったから、ぼくは単にイギリスの田舎町なんだろうなあと思って行った。ただ英国皇太子のことを「Prince Of Wales」っていうよね。
   聞けばウェールズというのはかつてウェールズ公国という独立国だったそうで、それを滅ぼした英国王が王子を支配者に据えて以来の習慣らしい。ブリテン島の西側の一角がウェールズ地方なんだけど、ぼくが行ったカーディフはその首都的な都市だそうでウェールズの中では幾分都会。

  驚いたのはこの地方、現在は立派な英国の一地方であるにも関わらず、言語が英語じゃなくてウォルシュ語(ウェールズ語)なんだよね。このウォルシュ語というのが英語の方言のようなモノかと思ったら大間違いで、根本的に別の言語なんだ。

ワークショップに参加した若者たちの一部

発音も全然違うし、聞いても全然わからない。現地の人の名前も、英語読みだと全然発音が違うんだよ。でもウォルシュ語だけを使っている訳じゃなくて、英語も併用していて看板表記なども二つの言葉で書かれている。特に都市のカーディフでは英語を使う人が多くて、ウォルシュ語を話せない子供が増えてしまったのに危機感を覚え、言語保存のために学校でわざわざウォルシュ語の授業を儲けているそうだ。

  そんな英国の中でも特殊な地域へ行って、ロンドン在住のドラマー=エリックと、現地のベテランベーシスト=エリカと一緒にライブをやった。主催してくれたのは、現地のジャズ好きが結集した「Torfaen Jazz Society」という団体。


トランペット奏者ケリ(Ceri)の愛猫フレッド

ジャズと音楽を熱烈に愛する英国の田舎の人々が、極東の果てからやってきたピアニストを暖かく迎えてくれたわけだ。

   エリカ(もちろん女性)とデュオで「Samba de Gato」をプレイし終わった途端、彼女は上着を脱いで腕まくりをした(笑)。ドラムも入ってグングン盛り上げまくり、そこへTorfaen Jazz Society代表でトランペット奏者でもあるケリ(Ceriとかいてケリと読む・男性)も参加してさらに盛り上がった。

終演後は会場が興奮に充ち満ちて、ノリ良く暖かくご機嫌なオーディエンスが口々に話しかけてくれた。

 「こんなに盛り上がったライブはTorfaen史上初めてだ!」とか、「今夜は後々まで長く語り継がれる夜になるよ」とか、「次回はいつ来るんだ?次のライブを決めよう」とか、「次回は私がもっといっぱいギグをブッキングするわ(エリカ談)」とか、最大の賛辞をたくさん送ってくれ本当にいい人たちだった。


昨年泊まったホテルの看板猫ミニー・マウス

今日の今日まで知りもしなかったカーディフという街で、生涯会うことも無かった人々の前で演奏し、最高の一時を共に過ごして人生の1ページに刻みつける。そんな事が起こるのもまさしくツアーの醍醐味だ。きっとTorfaenのみんなも、人生不思議なことがあるもんだなあと思ってくれているに違いない。

 

  その夜は一晩、ケリの家にお世話になった。ぼくはなぜかイギリスではネコに縁があって、この夜もケリの飼い猫フレッドと一緒に寝ることになった。去年アビーロード・スタジオでレコーディングしたときも、ホテルの看板猫ミニー・マウスにすっかりなつかれたんだよなあ。
翌日の昼には、またまたTorfaenの若者たちと一緒にワークショップをやった。ぼくが作曲した日本テイストのナンバー「さくらガーデン」を題材に、東洋のスケールなどについて説明し、最後にこの曲を全員でセッションしたんだ。楽器を弾く人はそれぞれの楽器で、何も弾かない人は歌って全員で大合奏。初のウェールズ滞在は、本当にアットホームで楽しかった。

 こうしてワークショップを終えたぼくは、この後大事件の待つロンドンへと走ったんだけどその話はまた次回。11月には「RHYTHMATRIX〜2010年ラスト・ツアー」が始まります!さらにオーストラリアから素晴らしいボーカリストのルシンダ・ピーターズと、トップドラマーのサイモン・バーカーが来日し、大阪と水戸のみの2公演も行う予定。皆さん、どちらもお見逃し無く!!

<クリヤ・マコト・ライブ情報>
●RHYTHMATRIX 〜2010年ラスト・ツアー!
  出演:クリヤ・マコト(pf)、安井源之新(perc)、村上広樹(ds)
     コモブチキイチロウ(b:11/20-23)、早川哲也(b:11/6-7)+ゲストプレイヤー
  11/06(土) 三重サラーム(059-326-7568) ベース=早川哲也
  11/07(日) 三島Malt Cat's(055-962-0425) ベース=早川哲也
  11/20(土) 目黒ブルースアレイ・ジャパン(03-5496-4381)
          スペシャルゲスト=柏木広樹(cello)、上田裕香(vo)、浅川寛行(key)
  11/21(日) 名古屋スターアイズ(052-763-2636)
  11/22(月) 京都ラグ(075-255-7273) スペシャルゲスト=たなかりか
●AUSSIE MUSIC FESTA〜日豪ジャズナイト
  出演:ルシンダ・ピーターズ(vo/g)、クリヤ・マコト(pf)、サイモン・バーカー(ds)、魚谷のぶまさ(b)
  11/12(金) ホテルエルセラーン大阪4Fホール(06-6136-3478)
  11/18(木) 水戸ガールトーク(029-225-0050)
※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください


RHYTHMATRIX
ルシンダ・ピーターズ


クリヤ・マコト・オフィシャルサイト
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

 

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