第17回:ニューディール政策とラスベガス ニューディール政策とラスベガス、一見なんの関係も無いかのように見えるけれど、この二つはアメリカ文化が世界をリードするに至った重要な要素だ。アメリカという国は、文化やアートを、最初から明確にビジネスとして位置づけていたとも言える。そして、それこそが繁栄と永続の鍵でもあった。 ニューディール政策は不況下のアメリカで、ルーズベルト大統領が打ち出した不況打開策だ。これによってアメリカは、政府がある種の社会民主主義的な政策を取り入れることにより、政府の管理下で経済の健全性を取り戻そうとした。こうした動きの一環として、ヨーロッパ的な芸術復興策をとったんだ。 例えば、政府がコンサートやイベントを企画して、多くのアーティストやミュージシャンを直接雇用する。画家には直接壁画を発注し、作曲家へも直接作曲の依頼をする。同時に芸術家の教育と育成も行う。政府が劇場や社交場を作り、税金でこれを運用して雇用を生み出す。このことが後に、アメリカ文化が世界をリードする一大産業へ成長するきっかけとなった。 まずはミュージカル。予算集中投下によって劇場文化が栄え、ニューヨークにブロードウェイというミュージカルの都が誕生した。世界に冠たる大型ミュージカルはビッグマネーを生み出し、スターを目指す若者が溢れ、競争は激しくなり、そしてクオリティーはどんどん高くなっていった。 ニューヨークはまたあらゆる文化の中心でもあって、第一級のオペラハウスを持ち、第一級のバレエ団を持ち、第一級のオーケストラを持つ。ソーホーやビレッジと言ったアートの中心地もあり、もちろんジャズの都でもあり、サルサやヒップホップ誕生の地でもあり、クラブ・カルチャーの中心地でもある。こうした文化の隆盛を地域と国がバックアップして、ビジネスとして成長させてきたんだ。
40年代から60年代までは、マフィアがラスベガスを仕切ってホテルを経営していた。当時からファンシーなナイトクラブや劇場で、漫談、ダンス、音楽などが複合したボードヴィル・ショーが行われた。そこではフランク・シナトラ、ナットキング・コール、サミー・デイヴィスJrなどのスターが活躍し、これもまたジャズの都の一つだった。 80年代以降のラスベガスはマフィアの影響力が一掃され、合法的な企業が経営を引き継いでいると言われる。最近は街全体がテーマパークのような感じになって、賭博に興味のない客も大勢訪れるまでになった。 近年のベガスでは、ナンシー・ウィルソンやアル・ジャロウのようなジャズ歌手はもちろん、プリンス、グロリア・エステファンのような大スターが定期的にショーを行い、トップレスのダンスレビューやマジック、サーカスのようなショーまで、ありとあらゆる大衆文化の宝庫になっている。日本でも有名なシルク・ドゥ・ソレイユもラスベガスが本拠地で、MGMやミラージュなど複数の有名ホテルで常設公演を行っている。 というようなアメリカ文化の事情を下地に、次回はジャズと切っても切れないミュージカルについて見てみよう。 さてぼくの近況だけど、現在はとあるシンガーのレコーディング中。だけど2月には、RHYTHMATRIXの2010年初ライブがある。また3月にはTOKYO FREEDOM SOULでエジプトへ渡り、カイロ・ジャズフェスティバルに出演する。その前後に東京でライブをやる予定なので是非来てね! |
●RHYTHMATRIX with HIDEBOH 2月28日(日) ヤマハ銀座スタジオ(チケットぴあにて発売中) 出演:クリヤ・マコト(pf)、コモブチキイチロウ(b)、安井源之新 (perc)、村上広樹(ds) スペシャルゲスト=HIDEBOH(tap) ●納浩一「琴線」ライブ 3月5日(金) 水戸Girl Talk(029-225-0050) 出演:納浩一(b)、クリヤ・マコト(pf)、則竹裕之(ds) ●TOKYO FREEDOM SOUL with 上田裕香 3月8日(月) 六本木ALFIE(03-3479-2037) 出演:クリヤ・マコト(p)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)、 ゲスト=上田裕香(vo) |
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