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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第16回:ナイトクラブとレビューの文化

レビュー(revue)という言葉は元々フランス語で「批評」の意味。最近の出来事について、風刺的に表現する歌や踊りをレビューという。フランスのシャンソンは風刺的な内容の演劇的要素を持った舞台が多いんだけど、レビューという言葉は、多分元々そういう雰囲気なんだろうね。ちなみに日本の「演歌」も「演説歌」が語源で、元々は政治を風刺する歌を指していた。それが次第に、時代に翻弄される個人の心情を歌うものに変わっていったそうだ。
いわゆる「演芸」という意味でのレビューは、イギリスのミュージックホールで発展した。ロンドンなどは行けばわかるけど、様々なショーやレビューやミュージカルが盛んで、いまだにミュージックホール文化だなあと感じる。日本でもかつては少女歌劇団がフレンチカンカンのようなラインダンスを踊ったりしてたけど、あれがレビュー。最近で言えば、アレグリアとかシルク・ド・ソレイユのようなサーカスっぽいのもレビュー。ブラストとかマジック・ショーなんかもレビュー。

どこの国にもこの文化はあったけれど、アメリカでは特に大きい意味を持つ。後にブロードウェイの巨大産業を生み出すことになるからだ。そしてブロードウェイばかりじゃなく、ジャズにおいてもこれは大きい意味を持っていた。
ミンストレル・ショーに変わってレビューの主役となったのは、19世紀末にイギリスのミュージックホールから輸入された演芸スタイルの「ボードビル・ショー」と、フランスやドイツのオペレッタ喜劇が元になっていると言われる「ミュージカル・コメディ」だった。ミュージカル・コメディはもちろん、後にブロードウェイで発展するミュージカルの原型で、音楽とダンスと舞台装置で見せる音楽劇だ。
一方ボードヴィルは「バラエティー・ショー」とも呼ばれ、歌、ダンス、コント、手品などを複合したショービジネスを指す。ミュージカルと同様に現在も健在で、ラスベガスのナイトクラブなどが有名だ。ここから有名歌手、ダンサー、コメディアン、マジシャンなど、大スターを数多く輩出している。映画との関係も深く、エジソンが最初に映画の題材として選んだのがボードヴィル・ショーだったし、最初の映画館になったのもボードヴィルを演じる劇場だった。チャップリンやバスター・キートンなど、初期のハリウッド・スターはボードヴィルから生まれた。
ボードヴィルもミュージカルも、当然主流は白人だった。ミンストレル・ショーの要素がボードヴィルにも受け継がれ、黒塗りの白人役者は相変わらず活躍していたそうだ。しかし今度は時代の流れもあって、黒人たちの芸術的才能が開花し、黒人が黒人のためのボードヴィルを生み出すことに成功した。以前書いた「コットンクラブ」でのショーも、観客は白人だったけど、演じ手は黒人によるバラエティー・ショーをやっていたんだ。

  黒人ボードヴィルが生まれたことによって、黒人による本格的なショービジネスがスタートした。つまり彼らはボードヴィリアンとして定職を掴み、芸を磨くことに専念することが出来、文化を高めていく道へ入ったわけだ。ここで黒人バンド、黒人歌手、黒人ダンサーやタップダンサー、黒人コメディアンが大いに活躍した。時代はまさに若きアメリカが頭角を現す最中で、ショーの規模は大きく華やかだった。白人レビューほどではなかったが、それなりの収入も得られた。バンドはもちろんビッグバンドだった。

余裕が出来れば当然技術が上がり、アレンジも洗練されてくる。そうしてビッグバンドを伴奏に看板シンガーが歌う「クラシック・ブルース」が生まれた。初期の黒人名歌手はことごとくブルースシンガーなんだよね。古くはベッシー・スミス、エセル・ウォーターズから、新しくはビリー・ホリデーくらいまで。バンドはエリントンからカウント・ベイシーに至る超一流どころ。こうして1930年代までに、黒人文化も完全開花したと言える。
もちろんエリントン+レナ・ホーン、ベイシー+ビリー・ホリデーやエラ・フィッツジェラルドという神様みたいな名アーティストが生まれるまでには、本当に数多くの黒人ボードヴィリアンが活躍したんだ。また成熟した黒人レビューはヨーロッパへも渡り、1920年代にジョセフィン・ベーカーがフランスで大成功を収めた。こうしてかつて奴隷だったアフロ・アメリカンの文化は、若きアメリカを象徴する文化として世界で受け入れられるまでに成長し、ジャズエイジの象徴となった。

さて、ぼくの年明けライブ始めは、東京青山の老舗ジャズクラブBODY&SOULの2010年第一弾ライブ。TOKYO FREEDOM SOULで、ゲストにMARUちゃんを迎えます。そして、ぼくが全面的に音楽プロデュースをやらせてもらった、美人バイオリニスト牧山純子ちゃんのニューアルバム「Liberta」のリリース記念ツアーがあります。皆さん、是非見に来てね!

<クリヤ・マコト・ライブ情報>
●TOKYO FREEDOM SOUL with MARU
・1月6日(水) 南青山BODY&SOUL(03-5466-3348)
出演=クリヤ・マコト(p)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)、ゲスト=MARU(vo)
●牧山純子・アルバム「Liberta」リリース記念ツアー
出演:牧山純子(vln)、クリヤ・マコト(p)、納浩一(b)、大槻 "カルタ" 英宣(ds)
・1月17日(日) 横浜Motion Blue YOKOHAMA(045-226-1919)
・1月26日(火) 倉敷クッキージャー(086-425-9901)
・1月27日(水) 広島ジャイブ(082-246-2949)
・1月29日(金) 大阪ミスターケリーズ(06-6341-6667)
・1月30日(土) 名古屋スターアイズ(052-763-2636)
・1月31日(日) 豊橋シャギー(532-55-3377)
・2月17日(水) 東京STB139(03-5474-0139)


※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください。
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

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