第11回:田舎音楽の代表、ブルース 「ブルース」の時点では、まだ純粋な黒人音楽だと言ってもいいだろう。実際、前回書いたよう黒人音楽ならではの要素が濃厚だ。だけど実は、ブルースが誕生した時点で既に、かなり白人音楽の要素がハイブリッドされている。 まずは楽器だ。ブルースを演奏する楽器の代表格と言えば、もちろんギター。アフリカでもギターに類するような弦楽器は当然あったけれど、南部に多いラテン人が演奏していたギターを手にした時点で、その影響を全く受けないというわけにはいかない。弦の数、1弦で弾ける音程などが決まっているから、当然その制約も受ける。 ただし、一人の黒人青年が1本のギターを手にした時点では、誰か有名なプレイヤーに影響されたり、そういったプレイヤーを目指していたわけじゃなかった。彼らは先入観無しにギターを手にして、誰に習うわけでもなく自己流で演奏した。だから初期のブルースプレイヤーは、今までどこでも聴いたことがない、想像することすら出来なかったような音楽をプレイしていた。
白人たちがびっくりしたのは、主にその破天荒な楽器の奏法だった。チューニングはハチャメチャだし、ハーモニーは濁っているし、なによりやたら音がデカかったり(笑)。わかりやすい例で言えば、ブルースハープ(小さめのハーモニカ)を口の中に完全に銜え込んだ状態でプレイするヤツなんか、もちろん黒人のブルースマンしかいなかったろう。だけどなぜだか魅力的なんだよね。 こんな風に破天荒なプレイをしていたのは、もちろん我流でやっていたというのが一番大きな原因だけど、それだけじゃなかった。以前にも書いたとおり、やっぱり「濁った音が好き」とか、「うねるリズムが好き」といった黒人独特の好みが強く影響していたんだ。 グルーヴィー&ソウルフルなユニット「TOKYO FREEDOM SOUL」のフライヤー。 当時の黒人達は教育の機会など与えられていなかったから、音楽も歌詞の内容も本当に無学で、他愛なくて、くだらないと言ってもいいくらいだ。だけどそれが本当に彼らの生活からにじみ出した音楽だから、吐き出さずにはいられない言葉であり叫びだから、さらには長年抑圧されてきた魂のうめきだから、心を動かされずにはいられない。 そこにはまた、生活の困難の耐え難きを否応なく耐えてきた、ハンパでない強ささえもあった。そんな音楽を、豊かな白人達が想像すら出来ないのは当然のことだよね。 さて、こんな風に「聴いたこともない」と思わせた音楽も、後の研究者がよくよく分析してみたらやはり白人音楽の影響を強く受けていたらしい。次回はそのあたりから説明しよう。(つづく) <クリヤ・マコト・ライブ情報> ■8/7(金):TOKYO FREEDOM SOUL@青山BODY&SOUL(03-5466-3348) 出演:クリヤ・マコト(pf)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds) ■8/23(日):RHYTHMATRIX@目黒Blues Alley Japan(03-5496-4381) 出演:クリヤ・マコト(pf)、コモブチキイチロウ(b)、安井源之新(perc)、 村上広樹(ds)、青木カレン(vo)、Wilma(vo)、住友紀人(key/ts) ■クリヤ・マコト・トリオ・ツアー2009 出演:クリヤ・マコト(pf)、早川哲也(b)、大坂昌彦(ds) 9/12(土):水戸常陽藝文ホール(029-231-6611) 9/25(金):名古屋スターアイズ(052-763-2636) 9/26(土):神戸松方ホール(078-362-7191) 9/27(日):豊橋シャギー(0532-55-3377) ※詳細はこちらを→http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html |