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ハイブリッドジャズの歴史 -クリヤ・マコト-


第17回:ニューディール政策とラスベガス

ニューディール政策とラスベガス、一見なんの関係も無いかのように見えるけれど、この二つはアメリカ文化が世界をリードするに至った重要な要素だ。アメリカという国は、文化やアートを、最初から明確にビジネスとして位置づけていたとも言える。そして、それこそが繁栄と永続の鍵でもあった。
ニューディール政策は不況下のアメリカで、ルーズベルト大統領が打ち出した不況打開策だ。これによってアメリカは、政府がある種の社会民主主義的な政策を取り入れることにより、政府の管理下で経済の健全性を取り戻そうとした。こうした動きの一環として、ヨーロッパ的な芸術復興策をとったんだ。
例えば、政府がコンサートやイベントを企画して、多くのアーティストやミュージシャンを直接雇用する。画家には直接壁画を発注し、作曲家へも直接作曲の依頼をする。同時に芸術家の教育と育成も行う。政府が劇場や社交場を作り、税金でこれを運用して雇用を生み出す。このことが後に、アメリカ文化が世界をリードする一大産業へ成長するきっかけとなった。

まずはミュージカル。予算集中投下によって劇場文化が栄え、ニューヨークにブロードウェイというミュージカルの都が誕生した。世界に冠たる大型ミュージカルはビッグマネーを生み出し、スターを目指す若者が溢れ、競争は激しくなり、そしてクオリティーはどんどん高くなっていった。
ニューヨークはまたあらゆる文化の中心でもあって、第一級のオペラハウスを持ち、第一級のバレエ団を持ち、第一級のオーケストラを持つ。ソーホーやビレッジと言ったアートの中心地もあり、もちろんジャズの都でもあり、サルサやヒップホップ誕生の地でもあり、クラブ・カルチャーの中心地でもある。こうした文化の隆盛を地域と国がバックアップして、ビジネスとして成長させてきたんだ。

次いで映画。ニューヨークとは反対側、西海岸のロサンゼルスにはハリウッドという映画の都が誕生した。西海岸は季候が良く、日差しが明るいため、まだ技術の未熟だった映画を撮るのにふさわしい環境があった。この映画の世界がブロードウェイに華開いた劇場文化と結びつき、ガーシュウィンやリチャード・ロジャースなどが作曲したミュージカル作品を映画化してブレイク。
こうしてブロードウェイのローカルな俳優やダンサーが世界の銀幕スターとなり、音楽も世界中を駆け巡り、世界的スターシンガーと大金を稼ぐ大作曲家を生み出した。



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  一方、ラスベガスやアトランティックシティなどのカジノもまた、文化振興に大きな役割を担ってきた。というのは、一定規模の賭博場を作る場合、相応の宿泊施設や飲食店、娯楽施設などの併設が義務づけられているからだ。つまり、賭博で儲けたければ、必ずホテルと劇場を作らなければならないんだ。このため、カジノでは必然的に大規模な資本投下が必要となる。当然宣伝広告も大規模に行われ、多くの人々が集まり、食べて飲んで泊まっていくわけだから劇場も賑わう。カジノはギャンブルという贅沢な娯楽で利益を上げる代わりに、文化振興を行ってきたわけ。
40年代から60年代までは、マフィアがラスベガスを仕切ってホテルを経営していた。当時からファンシーなナイトクラブや劇場で、漫談、ダンス、音楽などが複合したボードヴィル・ショーが行われた。そこではフランク・シナトラ、ナットキング・コール、サミー・デイヴィスJrなどのスターが活躍し、これもまたジャズの都の一つだった。

80年代以降のラスベガスはマフィアの影響力が一掃され、合法的な企業が経営を引き継いでいると言われる。最近は街全体がテーマパークのような感じになって、賭博に興味のない客も大勢訪れるまでになった。
近年のベガスでは、ナンシー・ウィルソンやアル・ジャロウのようなジャズ歌手はもちろん、プリンス、グロリア・エステファンのような大スターが定期的にショーを行い、トップレスのダンスレビューやマジック、サーカスのようなショーまで、ありとあらゆる大衆文化の宝庫になっている。日本でも有名なシルク・ドゥ・ソレイユもラスベガスが本拠地で、MGMやミラージュなど複数の有名ホテルで常設公演を行っている。


というようなアメリカ文化の事情を下地に、次回はジャズと切っても切れないミュージカルについて見てみよう。
さてぼくの近況だけど、現在はとあるシンガーのレコーディング中。だけど2月には、RHYTHMATRIXの2010年初ライブがある。また3月にはTOKYO FREEDOM SOULでエジプトへ渡り、カイロ・ジャズフェスティバルに出演する。その前後に東京でライブをやる予定なので是非来てね!


<クリヤ・マコト・ライブ情報>
●RHYTHMATRIX with HIDEBOH
2月28日(日) 
 ヤマハ銀座スタジオ(チケットぴあにて発売中)
出演:クリヤ・マコト(pf)、コモブチキイチロウ(b)、安井源之新 (perc)、村上広樹(ds) スペシャルゲスト=HIDEBOH(tap)
●納浩一「琴線」ライブ
3月5日(金) 水戸Girl Talk(029-225-0050)
出演:納浩一(b)、クリヤ・マコト(pf)、則竹裕之(ds)
●TOKYO FREEDOM SOUL with 上田裕香
3月8日(月) 六本木ALFIE(03-3479-2037)
出演:クリヤ・マコト(p)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)、
ゲスト=上田裕香(vo)


※詳しくは、クリヤ・マコト・オフィシャルサイトをご覧ください。
http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html

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