第3話 AHMAD JAMAL

私用で2ヶ月程東京に滞在。9月中旬にニューヨークに戻ってきてすぐ JAZZ AT LINCOLN CENTER
ROSE THEATERでAHAMAD JAMALのコンサートがあると言うので早速、ひどい時差ぼけの中聴きに行ってきました。
まだ出来上がってさほど時間も経っていないこのJAZZ AT LINCOLN CENTER内にはいくつかのライブハウス、
コンサート会場があるようなのですが、おしゃれでステージの後ろが大きなガラス張りで演奏を聴きながら外が見えるDizzy's Club CocaColaへは何度か行ったことがあるのですが、今回初めて行ったこのROSE THEATERの立派さには
驚きました。ウイントン マーサリスを音楽監督に迎え設立されたこのジャズの為の施設。
やっとジャズもほぼクラッシック並みのレベルの芸術として認められ始めたと痛感した、と同時に感慨深い物が
ありました。 ミュージシャン達をほぼ360度囲むように音楽を聴くことが出来て、しかも素晴らしい音響である。
一流のクラッシックコンサートホール同様に高い天井から数本のマイクも設置されています。
きちんとしたクラッシックの基礎があるこの高齢のAhmadが登場するや否や会場からは割れんばかりの拍手。
ピアノの椅子に腰掛け終わる前にもう彼の手はピアノに、そして複雑にアレンジされた彼の音楽が飛び出し、もうすでにスイングの真っ只中。
マイルスデイビスが彼から多くを学んだとインタビューでも以前語っていたように、Ahmadのピアノはどの一音にも曖昧な音は無く、いつものように最初から最後まで一貫した緊張感のある演奏。まったく衰えはない。
しかも彼独特の複雑な構成の音楽をバックのミュージシャン達も譜面を見るわけでもなく伴奏し、完璧にAhmadと一体化し素晴らしい演奏であった。
最近どうしているのかな?と思っていたウエザーリポートに参加したパーカッションのMANOLO BADRENAに久々に
会えたのも非常に嬉しかった。
ちなみにこの最初のセットのメンバーは
James Cammack(Bass)
James Tare Johnson III(Drums)
Manolo Badreina(Percussion)
もちろん新アレンジの下での名曲ポインシアーナを演奏し始めた時は会場は興奮のるつぼと化した事は
言うまでもない。

さて2セット目。このタイトルは 
Ahmad Jamal AND THE JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA WITH WYNTON MARSALIS

Ahmadとそのリズムセクションがほとんど1音だけのペダルノートを出しつづけている中で、ホーンセクションの一人一人が時間にすれば5分程度の長いソロを取っていくのである。まずはウイントンからそしてRyan Kisor, Sean Jones などほぼ全員のホーンプレイヤーがソロを引き継いでゆくのであるがそれぞれのメンバーのその見事なソロの展開は
心底驚嘆した。
ただのスケールをこねくり回している次元ではなく、ウイントンなどは巧みに微妙な音程を操りながら黒人のルーツを
彷彿とさせる世界に持ってゆくのである。
みなさんは以下に記するメンバーを何人知っているであろうか? 私自身も実は知らない人のほうが多い。
がこのおそらくほとんどが70年代に生まれた世代の管楽器プレイヤー達。そのレベルの高さたるやこれはもう驚きと
そして感激以外の何ものでもなかった。
さすがウイントンに選ばれた先鋭の管楽器プレイヤー達。彼らにただ脱帽し、そしていまさらながらアメリカンジャズの
レベルの高さに驚くと共に、いろいろ批評はあるだろうがウイントン マーサリスという一人の若手音楽家がいまこうしてアメリカの生んだジャズの伝統を継承、そして発展させている姿を見て改めて彼を再び深く尊敬した。
実際に彼と話してみても、とてもきちんとした礼儀の正しい人である。
ただしこのコンサートのティケットはほぼ$100であったため、お客さんのほとんどは白人のやや年配の地位も財産も
築いたような、つまりクラッシックのコンサートで見かけるようなカップルが多かった。このアメリカ社会で$100も出してジャズを聴きに行ける、あるいは行こうと思う黒人や若い人達はまだそう多くはないと思う。

ジャズがこのように素晴らしい場所で演奏出来るようになり、入場料もクラッシック並の値段に近づく一方、いわゆる
昔の、街の小さなクラブで普通の人々が気楽に楽しめるジャズからは遠ざかる方向に向っているような気もする。
それにしてもこれほどまでに感動することの出来るジャズはまだまだ立派にこのアメリカには存在している事を嬉しく
思う。このメンバーがもし日本に行ったなら是非聴きに行って欲しいと思う。
JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA

WYNTON MARSALIS Music Director, Tp
RYAN KISOR Tp
SEAN JONES Tp
MARCUS PRINTUP Tp
VINCENT GARDNER Tb
CHRIS CRENSHAW Tb
ELLIOT MASON Tb
DAVID TAYLOR Bass Tb
SHERMAN IRBY Alto Sax, Flute
Ted Nash Alto Sax, Flute
Walter Blanding Sax
Victor Goines Tenor Sax, Alto Flute
Joe Temperley Baritone Sax, Bass Clarinet
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Ahmad Jamal Piano
James Cammack Bass 
James Tare Johnson III Drums 
Manolo Badreina Percussion。


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