You Play JAZZ?より
残念なことに、年々、ジャズライブハウスに足を運ぶファンが減っているそうです。
ジャズスポットのオーナーはもちろん、ミュージシャンとして演奏活動をされている方は特にその事を痛感されているのではないでしょうか?
それでは、ジャズ発祥の地、アメリカでは果たしてどうなのか?
今回ご紹介する下記コラムによれば、どうやらジャズ発祥の地アメリカも、日本と同じような状況に直面しているようです。
そのような状況をふまえた上で、「ジャズとは何か?」という難題。
色々な意味で考えさせられるこのコラムを、是非もっと多くの方に読んで頂きたく、今回、伊東忍さんのコラム第一回目として、
東海大学ジャズ研OB会 のご好意により「機関誌MONK」より転載させて頂きました。

第1話 (「機関誌MONK」2004/2/27発行分より転載)

実は多くのジャズ愛好家、ミュージシャン、その業界の人々もそう実感
しているように、もう本当にジャズが出来るミュージシャン達、
アートブレイキー、マイルス、デクスターゴードンその他、そういう人達がそこにいる、、、そのこと自体がジャズであり、歴史であった、、、、という時代は終わってしまったようです。
今このNYのジャズクラブでも出演者のかなり多くがジャズ学校の先生達とその生徒達、そして聴いているのがその学校の生徒とヨーロッパや日本からの観光客となってしまったようだ。
ある高名なピアニストがFMジャズ番組で嘆いていました。
<アメリカのジャズがジャズでなくなってしまって、ヨーロピアンジャズになってしまった。つまり音楽の裏側にアフリカの血が全く感じられない
ジャズとなってしまった>。

ジャズ学校などというものがなかった、あの時代を生きぬいてきた元祖ジャズミュージシャン達が皆死んでしまい、
その彼等がやったことをシステムとして学校で教えてしまい、生徒達はその学んだマニュアル的なフレーズを演奏するだけ,,,そんなミュージシャンが20年ほど前からだろうかジャズクラブで演奏しはじめた。
その結果、音楽の内容が<僕達もここまで演奏できるようになったんですけどどうでしょうか?>にすぎず(勿論これは私自身も含まれているかもしれませんが)、、、MILES, WESやCOLTRANE、あるいはロックのジャニス ジョップリン,ジミヘンその他の
100%オリジナルの主張と意味のある音楽を聴いて体験してきたこの街の人間にとっては殆ど聴く意味をなさない音楽に
成り下がってしまったと思います。そして多くのジャズクラブから客がはなれてしまった。

もっともジャズという音楽そのものがそうしていつも、過去現在,未来へと変貌してゆく性質のものなのであろうが。
先月もハーレムのセイント ニックス パブがつぶれました。
ジャズがパワーをなくしたことはこちらの多くの新聞などでとりあげられました。と同時に音楽を取り巻くメディアも急速に変化し、クラッシックもジャズもそのCDの売上が激減し、以前から噂されていましたが、数日前にタワーレコードが会社更生法を
申請しました。悲しいことです。
一つにはミュージシャン自身の創造する音楽の内容の質の問題、と同時に、またそれを取り巻く業界の、安易なプロモーションでスターを作ろうとしてきた結果であろうと思われます。
<まだ自分自身の音楽がしっかりと確立していない若いミュージシャン達があまりにも早い次期にCDデビューしてしまうのは
悲しいことだ。> とあのマッコイ タイナーも以前苦言を呈していました。

僕が学生のころ、オリジナルの新宿PIT INNに入る金が無いとき、よく入り口で他の同様の人々と立ち聞きしていた。
今思えばその当時どの程度の演奏であったのか知る由もないが、中からは日野さんやジョージ大塚等の火を吹くような演奏を聴くことができた。
日本国内が学生運動で騒然としている中、勿論薄暗いジャズクラブのなかでは皆真剣にたった1杯のドリンクでその演奏を
食い入る様に聞き入っていた。それが燃えていた70年代であった。
アメリカも勿論当時まだベトナム戦争終結からそれほど時も経ってなく、ジャズもロックも燃えていて後に歴史に残る多くの人材が生まれた。ちなみに当時のアメリカの標語はセックス、ドラッグ、ロックンロールであった。
それから随分と時が経ち、昔のような火を吹くようなジャズがここもう20年近く聴かれなくなったのではないか?
多くのジャズ学校が出来、自分でさほど努力せずとも、学校において過去の偉大なジャズプレイヤー達が残した演奏を分析したものをテキストとして与えられ、それをそのまま自分自身の音楽として昇華し確立する前に人前で演奏し、なんとか生活してゆける、、、アメリカのジャズシーンも同様、昔から比べれば黒人の地位も少し上昇し、過去のミンガス、マックスローチ、
マイルスその他多くのミュージシャン達が抱いていた白人の差別に対する怒り、葛藤、挑戦などの姿勢が、現代ではかなり
和らぎ、表面的にはかなりその当時から比べると穏やかな時代になったこととも大きく関係していると私は思います。
<ケニ−Gを聴いて初めてジャズに開眼しました。>という人と出会った事もあるぐらいです。

<ジャズ>とは何なんでしょうね?
以前演奏していたクラブの黒人オーナーと良くこの結論のでないテーマについて話した事を思い出します。
少なくとも言える事は、ジャズは基本的にアメリカの民族音楽なのです。奴隷として運ばれてきたアフリカ人達。
カリブ海や南米にたどり着き、現地の音楽とミックスしてラテン音楽となり、一方、北米大陸の南部にたどり着き、ヨーロッパの西洋音楽と融合してジャズが生まれたのはみなさんもご存知でしょう。
作曲も、黒人達の作曲と、コールポーターを始め、その他の白人の作曲が全く違うように、いずれの国の音楽もその国の言葉のアクセントと密接な関係があります。
外国に住んでいてよその国の音楽を理解するには、その音楽の発生した国の習慣、風習、言葉とそのアクセントその他
学ばなければいけない数多くの事柄があります。
いつでもただ単に過去の模倣に終わらず、何かを改革しながら自分自身の言葉で演奏しようとする努力とその姿勢が、現在を生きて行くミュージシャンに一番問われているかもしれない。
  (東海大学ジャズ研OB会「機関誌MONK」より転載)

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